徹底分析シリーズ 最近の癌治療
食道癌の術前治療―手術への影響は少ないが特有な有害事象への注意が必要
檜原 淳
1
,
岡田 守人
1
HIHARA, Jun
1
,
OKADA, Morihito
1
1広島大学原爆放射線医科学研究所 腫瘍外科
pp.138-139
発行日 2012年2月1日
Published Date 2012/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101101447
- 有料閲覧
- 文献概要
- 参考文献
胸部食道癌では,表在癌に分類される粘膜下層癌においても40%以上のリンパ節転移が認められ,転移リンパ節の分布も頸部から腹部まで広範囲に及ぶ1)。したがって,頸部,縦隔,腹部の3領域郭清が標準的に行われるため,外科手術は高度の侵襲を伴う。一方で,切除可能な進行食道癌に対する外科切除単独では,5年生存率がステージII,IIIで,それぞれ48%,33%(1999年登録症例)2)と,その治療成績に限界があることが明らかになっている。
食道癌は,ほかの消化器癌に比べて放射線感受性が高いため,外科治療に化学療法や放射線療法を組み合わせた,いわゆる集学的治療がこれまで試みられてきた。かつて日本では術後補助療法が中心であったが,治療コンプライアンスの高さなどから,現在では術前治療が主流となっている。術前治療の目的は,原発病巣の縮小による切除率の向上とリンパ節転移や微小転移のコントロールによる再発の予防である3)。
本稿では,食道癌に対する術前治療について概説し,周術期における留意点について述べる。
Copyright © 2012, "MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD." All rights reserved.