徹底分析シリーズ 素朴な疑問―これにて35件落着!
30件目―局所麻酔薬中毒が起きたときにはどのように対処するか
田中 聡
1
,
川真田 樹人
1
TANAKA, Satoshi
1
,
KAWAMATA, Mikito
1
1信州大学医学部 麻酔・蘇生学講座
pp.460-462
発行日 2011年5月1日
Published Date 2011/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101101231
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末梢神経近傍に投与された局所麻酔(局麻)薬は,末梢神経のNa+チャネルをブロックすることにより,軸索を伝わる神経伝導を遮断し,局麻作用を発揮する。しかし,Na+チャネルは末梢神経だけでなく中枢神経や心筋にも存在するため,血中に吸収された局麻薬濃度が過度に上昇すると,中枢神経障害や循環不全が発生する可能性がある。こうした局麻薬の全身性の副作用(毒性)のことを局麻薬中毒と呼ぶ。
局麻薬中毒では,まず中枢神経系の症状が出現し,次いで呼吸器症状(呼吸停止など)がみられ,最後に循環器症状(循環不全,心停止など)が起きる。局麻薬が徐々に血中に吸収された場合には,用量依存性に中毒症状が出現する(図1)。初発症状として,口唇のしびれや耳鳴りが出現し,その後,多弁,呼吸促迫,血圧上昇がみられる。
一方,血管内に局麻薬が誤注入された場合には,これらの初発症状をみずに,突然,意識障害や痙攣が発生することがある。さらに局麻薬の血中濃度が上昇すると,横隔神経伝導が障害され呼吸が停止し,心収縮が抑制され心室内伝導が遅延し,そして心室細動や心停止が発生する。局麻時には,局麻薬の偶発的血管内注入や過量投与により,常に局麻薬中毒の危険性があるため,麻酔科医はその診断と治療法に精通しておく必要がある。
そこで本稿では,米国区域麻酔学会American Society of Regional Anesthesia and Pain Medicine(ASRA)の勧告1)に沿って,局麻薬中毒の治療について概説する(表1)。
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