現代の歯科医療と麻酔科学

　本誌6月号にtotheEditorとして，劔物修北海道大学名誉教授が読売新聞社に出された手紙が掲載されていた。全国の病院における麻酔科医の不足という深刻な事態のなかでの歯科麻酔科医の活用などといったせっかちな提言に対して，麻酔科専門医の存在意義を正しく認識すべきだとするご意見にはまったく同感である。2005年9月に日本麻酔科学会が発表した「麻酔科医のマンパワー不足に対する提言」は，まことに当を得たものと考えられるので，「麻酔科医は沈黙を守る」ことなく，広く国民に訴えていくべきであろう。

　しかしながらこの手紙には，歯科医師に対する差別的な見方を感じさせる言辞が散見されることが，歯科医学の教職にある者としていささか残念に思われる。歯科麻酔学を専門としてはいない歯科医師（小生の専門は障害者歯科学と小児歯科学）が，本誌を毎号愛読していることなどは，おそらくは劔物先生の想定外だったのではなかろうか。