徹底分析シリーズ 区域麻酔のControversies
硬膜外麻酔に用いる局所麻酔薬は高用量か低用量か
井上 哲夫
1
Tetsuo INOUE
1
1日本医科大学千葉北総病院 麻酔科
pp.216-219
発行日 2009年3月1日
Published Date 2009/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101100604
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胸腹部手術を中心に,硬膜外麻酔に全身麻酔を併用するバランス麻酔が広く行われている。この際,硬膜外麻酔に用いる局所麻酔薬は,手術に必要なブロックの範囲や程度を十分カバーできるような高用量を用いるべきか,あるいは低用量にとどめるほうがよいのかの議論がある。いずれの場合も,硬膜外カテーテルを術中および術後に利用すべく留置することがほとんどであるが,ここでは,術中管理上の問題点につき考察する。
低用量の使用が考慮される理由は,バランス麻酔では,高用量使用により循環管理,特に血圧低下に対する管理に難渋する場面が多くあるからで,硬膜外麻酔を術中よりも術後使用に重きを置いた利用法といえる。また,術中の侵害刺激をほぼ完全にブロックすることによる硬膜外麻酔のよさや利点を生かし切れない方法ともいえるが,危険性が有益性を上回ると考えられる場合の判断,処置ともいえよう。
しかし,用量の高低を規定する確たる指標があるわけではなく,投与の時期や方法などを含め,この主題につき正面から系統的に取り組んだ研究は見当たらない。臨床環境や症例により使い分けを行う向きもあり,麻酔科医の主義や考え方,嗜好などが判断基準として大きく関与する問題でもあろう。
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