症例検討 麻酔導入法で悩む症例
認知症の虚血性心疾患,陳旧性心筋梗塞,うっ血性心不全患者:麻酔中は血圧の変化を早く正確に捉えて適切に対応,術後も心筋虚血等の予防に努める
黒田 昌孝
1
,
齋藤 繁
1
Masataka KURODA
1
,
Shigeru SAITO
1
1群馬大学大学院医学系研究科 脳神経病態制御学講座麻酔神経科学
pp.1210-1214
発行日 2007年12月1日
Published Date 2007/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101100526
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症例
77歳の男性。身長157cm,体重52kg。重症冠動脈疾患があり,5年前より硝酸薬やカルシウム拮抗薬,ACE阻害薬などの内服治療を受けていた。2年前より認知症も併発し,日常生活での活動性も低下していたが,3週間ほど前から元気がなく食欲も低下したということで入院した。肺炎およびうっ血性心不全と診断され,抗生物質とジゴキシン,フロセミドで治療された。病状は改善し,経口摂取も順調に増えていったが,夕食後に内服薬を飲む際に,誤ってPTPシートごと薬物を誤飲し,緊急内視鏡的摘出術が予定された。
2年前の冠動脈造影検査で,重症3枝病変(#3 75%,#4PD 90%,#6~#7 90%,#11 90%)と左室前壁中隔の陳旧性心筋梗塞(OMI)を指摘されていた。しかし,メインの左前下降枝の狭窄部は病変が長くて,その末梢の血管も細く,しかも健常な残存心筋が少ないということで,PCI, CABGとも適応がなかった。心電図上,V1~V4誘導までQSパターンを認めた。胸部X線写真上,肺うっ血は認めないが,心胸郭比は60%であった。心エコー上,左室前壁中隔の無収縮と中等度の僧帽弁逆流症を認め,駆出率は30%であった。動脈血酸素飽和度は空気呼吸下で94%であった。
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