- 販売していません
- 文献概要
■ある日の編集会議では,知的財産のことが話題になりました。まわりを見渡してみても,結構特許を持っている方が多いということです。特許ではありませんが,本誌Vol.9 No.9の「プロダクトX-Files」では,心電図コード“一本君”(実用新案登録)誕生の壮絶な物語が紹介されました。青色ダイオードの発明対価が億の単位となると,目の色も変わってこようというものです。ちなみに,エーテルによる麻酔も特許申請されたものの,認められませんでした。アメリカにおける特許の持つ意味といっしょに,最初の麻酔にかかわった3人の男たちの物語は『エーテル・デイ』(文春文庫)をお読みください。
しかし,特許が絡んでくると,学会での発表はもちろん,論文ですらも,本当のことは書かなくなってきているという変なことが起きている,といいます。たとえば,基礎系の論文はその再現性が求められるはずなのに,一番大事な実験のコツはわざと変えて投稿する。そうしないと,レフリーがまねをし,先に特許をとってしまう。究極のインサイダー。たとえば,新しいタンパクを発見したとします。その場合,アミノ酸の一部をわざと変えて投稿する。そして,論文が受理された後にその箇所を訂正する。全部ではないが,これはというものは,投稿前に特許申請を行い,プロテクトしておかなければならないのだそうです。そういえば,学会での発表はライバルに先んじられないため,彼らをミスリードするような技が必要なんだ,と話してくれた方もいます。
学会とは,学問研究に携わるものが,自らの研究成果を発表し,その科学的妥当性を検討論議するオープンな場,すなわち真理を追究する場のはず。したがって,そこで発表された新たなる発見,真理に,priorityとしての名誉はともかく,“お金”が絡んでくるとは,いささかえげつない話です。企業においても,そこの技術者は特許をたくさん取ることを義務づけられていると聞きます。ノルマを課せられているとも。また,大学でも,特許を取れないような研究はダメぐらいに言われている昨今です。お金を払わないと,使わしてあげないとは,了見の狭い話になってしまいます。そういえば,AIDSの治療薬に関して,国際世論によって,特許料の免除がなされるようなことがありました。
アメリカの会議では守秘契約義務のサインをしてから会議をする,と聞きます。自分のアイディアは決して公言しない。わが国でも,学内の会議においてすら,そこで話し,記録に残るものは,公開したものと見なされるようです。したがって,後から後悔しないためには,最初に守秘義務の契約を交わしておくか,何もしゃべらないかということになるとか。
ということで,長い前置きになりましたが,日常臨床の場ではさまざまな創意工夫が生まれております。そこでLiSAでは,知的財産に関する一大博覧会を計画することになりました。つきましては,読者の皆様がお持ちの特許を募集いたします。編集部までE-mailにてお送りください(締切:11月3日)。
Copyright © 2007, "MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD." All rights reserved.