症例検討 冠動脈疾患患者の麻酔
めずらしい術中心筋梗塞:周術期のβ遮断薬の使用とPCPSの適応を考える
平松 大典
1
,
大西 佳彦
1
Daisuke HIRAMATSU
1
,
Yoshihiko ONISHI
1
1国立循環器病センター 麻酔科
pp.916-919
発行日 2008年9月1日
Published Date 2008/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101100195
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
症例
52歳の男性。身長170cm,体重75kg。肺癌に対して右肺上葉切除術が予定された。高血圧のため,2年前よりカルシウム拮抗薬を服用していた。気管支鏡検査の際に動悸を自覚したが,一過性であったため,それ以上の検索はなされなかった。
麻酔は吸入麻酔による全身麻酔(分離肺換気)および硬膜外麻酔で施行した。術中体位は左側臥位であった。閉胸し皮下を縫合している時に突然心拍が不整となり,PVC(心室性期外収縮)が多発,そのまま心室細動に移行した。直前に低酸素血症やST変化,頻脈,血行動態の変動などをまったく認めなかった。
経過
蘇生処置にきわめて抵抗性であったため,PCPS(経皮的心肺補助)の開始を決定した。へパリンの投与直後から自己心拍は再開し,心室細動の原因検索のため緊急CAG(冠血管造影)を施行した。#6の遠位に99%,#4PDに75%狭窄を認めたため責任病変と思われた#6に対してPTCA(経皮経管的冠動脈形成)を施行し良好な拡張を得た。神経学的には末梢性の腓骨神経麻痺以外はほぼ完全に回復した。術後の麻酔科回診で,最近の山登り中に胸痛を自覚することがあったことが判明した。
Copyright © 2008, "MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD." All rights reserved.