- 販売していません
- 文献概要
■“麻酔医”ではなく“麻酔科医”がタイトルに付された書籍が2冊,期せずしてこの6月に刊行されました。『麻酔科医』(江川 晴 著,小学館)と『麻酔科医ハナ』(なかお白亜 著・松本克平 監修,双葉社)です。前者は小説,後者はアクションコミック,すなわち漫画です。
『麻酔科医』は,麻酔科学会のニュースレター(Vol.15 No.4)に「小説刊行!!」と「!」二つ付きで紹介された期待の小説。それだけに,麻酔科医をメディアを通して広くアピールしていく広報活動の一環だという先入観で読み始めると,麻酔手技の記述は‘テキスト'を追っているようで,ずいぶん説明ぽいなと思い,ついついはしょってストーリーを追ってしまいがちになりましたが,さすが日本麻酔科学会監修であると感心。その一方で,「パルスオキシメーター」に「経皮的動脈血酸素飽和度測定」と補っても,かえってわからなくするだけではと心配になり,さらには,「ルンバール(腰椎麻酔)」は「腰部脊椎くも膜下麻酔」でなければいけないだろうと,用語集によらない記述に憤慨(?)したり,一気に最終ページまで行ってしまいました。
『麻酔科医ハナ』,漫画は小説と違い,ビデオで麻酔手順を説明するのと同じで,麻酔科医が日々何をしているのかが楽に伝わります。たとえば,パルスオキシメーター(用語集では「パルスオキシメータ」)にしても,指先にパルスオキシメータを描き,「血中の酸素濃度を測る」と説明し,吹き出しに「洗濯バサミのようなものを指にはさみます」と入れるだけですみます。『麻酔科医ハナ』の「あとのあがき」に著者は描きます,「199X年,メジャー科(外科・内科)医主人公の医療マンガが次々と連載開始するちょっと前…“麻酔科医の知名度をもっとあげるのだー”何故かかっちょよい麻酔科医が主人公のマンガが欲しくてたまらなくなった私がいました」,しかし単行本化された時「気づきました…“この漫画いるのか?”十年の間にすっかり麻酔科医の存在は世に知られるところとなっていた事に…」と。でも,「漫画アクション」連載時のタイトルは『麻酔医ハナ』で,この「麻酔医」を「麻酔科医」に変更するにはそうとう苦労されたということを考えると,世の麻酔科医の理解はまだ十分ではない,ということでしょう。
それにしても,この2冊は似ています。「お腹が硬い」という外科医の,駆け出し麻酔科医への文句や,患者を挟んでの外科医との抗争,そうなんだと納得してしまいます。それだけ普段の麻酔科医が描かれているということ。しかし,TVドラマ化は難しいのでは,と思えてなりません…。
Copyright © 2008, "MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD." All rights reserved.