論述
子宮平滑筋細胞内電位よりみた妊娠経過ならびに分娩機転
後藤 昌義
1
,
西岡 勝利
2
,
四位 恒男
2
,
羽牟 幸男
2
1九州大学医学部第二生理
2鹿児島大学医学部第二生理
pp.231-242
発行日 1959年10月15日
Published Date 1959/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425906093
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Ⅰ.いとぐち
子宮平滑筋の細胞膜電位に関する研究は,WoodburyとMcIntyre(1954)によつて最初に試みられ,WoodburyとMcIntyre(1956)はinsituで,またWestとLanda(1956)は摘出標本で初めて静止電位をovershootした細胞膜活動電位の記録に成功した。その後,GotoとWoodbury(1958)Daniel(1958)らのNa+イオンならびに伸展の影響に関する業績があるが,未だこの分野における研究は日が浅く,ovarian steroidsの子宮平滑筋細胞内電位に及ぼす影響についてはまだ報告がない。
周知のように子宮平滑筋の運動は動物の種類,妊娠の有無およびその時期,性周期の時期,疲労やstressの存在また栄養状態,年齢や個体差といつた多様の因子によつて左右される。しかし妊娠中の子宮平滑筋は各種ovarian steroidsの強い支配下にあり,ことに妊娠末期あるいは分娩時においては脳下垂体ホルモンoxytocinが重大な役割を果していることは多くの学者の一般に認める事実といえよう。しかしながら,何故また一体どのようなメカニズムで子宮筋の収縮性が変化するのか,またoxytocinに対する感受性が変化し分娩時の強い収縮,陣痛が招来されるかについては未だ一向に解明されていない。
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