論述
グルタミン酸脱水素酵素の生物理化学的研究
久保 秀雄
1
,
岩坪 源洋
1
,
亘 弘
1
1大阪大学医学部第一生理学教室
pp.146-158
発行日 1959年6月15日
Published Date 1959/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425906077
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まえおき
ピリジン酵素はDPN或はTPNを作用簇とする酵素群であり,生体内酸化還元系における第1の段階,すなわち基質と電子運搬系との間の水素運搬の第1段階に関与する酵素である。これらの酵素のうちアルコール脱水素酵素を始めとして多くのものが結晶化され,その反応機構についても多くの業績があげられている。
われわれは十数年来これらの酵素のうちとくにグルタミン酸脱水素酵素について物理化学的な研究を進めて来た。この間痛切に感じたことは,酵素の作用機構をはつきりつかむにはどうしても酵素を純枠にそして大量に入手できるようにせねばならぬことであつた。この酵素は古くEuler等によつて研究が進められ,1951年Olsonが牛肝より始めて結晶化に成功するに至つて,酵素蛋白の物理化学的性質が著しく明確にされた。当時,殆ど時を同じくしてStreckerがOlsonとは全く独立にこの酵素を結晶化した。ところが両者の得た酵素蛋白にはいくつかの相異が認められた。而もこの相異については両者の間で何等解決はついていない。最も顕著な相異点は結晶酵素の比活性度である。比酵素活性を我々の単位であらわすとOlsonの得た酵素は6000単位の活性を示し,Streckerの得た最高純度の酵素は12000単位の活性を示す。又Streckerの方法によれば酵素結晶化の途中,アルコール濃度の高低によつて2種類の酵素を得ている。
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