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緒言
細胞内外の水分交流機構に関しては古くより研究せられて来たが,近年J. R. Robinson1)2)3)Opie, E. L.4)5)6)H. H. Ussing7)等の研究や又同位元素の広範な医学的応用により,細胞膜を介する細胞内外の水分平衡は単純な物理化学的な平衡としては理解し難い事が判つた。
例えばJ. R. Robinson1)(1950)は等張食塩水中に浮遊せしめた鼠のliving kidney sliceに1/200M/L KCNを与えて組織呼吸を阻止すると細胞内水分量が増加する事を認め,又Opie, E. L.4)(1950)は鼠の組織膨化を防ぐためには等張溶液の2倍程度の高張性溶液を必要とする事を報告している。これらの事実は細胞内外め水分交流が単なる滲透圧平衝によつて行われるとの考えでは説明困難であるから,J. R. Robinson2)はこれを次の如く説明した。細胞内は細胞外に比べて常に高張性であつて,細胞外の水分は自由に細胞内に入り得る為に,水分は常に細胞外より内へ侵入して,これを膨化せしめんとする。併し細胞膜には水ポンプとも称すべきエネルギーを消費して水分子を輸送する機構が備つていて,これにより細胞外へ水を汲み出し,細胞の形態を保つている。然るにこの水ポンプに何等かの支障を来す時には水の侵入の方が汲み出しよりも大きくなつて細胞の膨化が起るのであろう。CNを用いた時の膨化は正しくその結果であろう。
In order to clarify the water balance mechanism through the cell, the author has experimented on the leucocytic samples collected from the peritoneal cavity of puppy-dogs by changing oxygen consumption or water balance within and outside the cell with various means.
The summary of the results is as follows : 1. The osmotic pressure of intracellular fluid is roughly twice as hypertonic as that of extracellular and 53% of them are due to Na salt and K salt.
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