Japanese
English
諭述
甲状線ホルモンの作用機転
Mechanisms of action of thyroid hormones
山本 清
1
Kiyoshi YAMAMOTO
1
1群馬大学医学部内分泌研究所生理学研究室
1Section of Physiology, Endocrinological Laboratories, School of Medicine, Gunma University
pp.340-351
発行日 1956年8月15日
Published Date 1956/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905902
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
甲状線ホルモンの作用機転の問題は多くの研究者の興味をひき,すでにかなりの業績が発表されているが,それにもかかわらずこの問題はなお殆んど明らかになつていない。その理由を考えて見ると,酵素やビタミンと同様に微量作用物質でありながら,これらに比較してホルモンの作用が一層複雑なためではないかと思われるのである。元来ホルモンの作用は,物質代謝とエネルギー変換の調節にあると考えられる。酵素や多くの助酵素の前駆体であるビタミン,あるいは酵素のactivatorとして作用する金属イオン等の微量物質の作用は,それ自身複雑ではあつても,化学変化に対して一定の方向の影響,たとえば反応速度を高めるというような点で生物学的にはむしろ単純な作用物質ともいえる。それに対して,ホルモンはこれら物質の作用を調節しているのではないかと考えられるふしがあり,調節作用は,一方的な促進作用または抑制作用ではなく,ある条件下では促進的,他の条件下では抑制的に作用することを意味する。作用物質としてのホルモンの,このような性格の複雑さの故に,ホルモンの作用に関する実験は再現性に乏しく,その作用機転の解明を困難にしているものと思われる(Dutoit,1952)。
甲状腺ホルモンの作用及び作用機転も例外ではない。
Copyright © 1956, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.