論述
微小電極法に就て
富田 恒男
1
1東京女子醫科大學生理學教室
pp.8-16
発行日 1951年8月15日
Published Date 1951/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905596
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
1.緒言
加藤門下1)2)により完成せられた單一筋並に神經線維の剔出法が神經筋生理學の進歩に大きな貢献を齎したことに就ては,今更申述べる迄もないことゝ思う。然し反面如何なる方法もその應用範圍には又自ら限界が存することは當然で,例えば末梢神經等に對しては極めて有力である剔出法も,中樞神經系や感覺受容器,或は又單一線維の剔出に不向きな腦神經の或ものなどに就ては,それ等の中の單位活動を分離して検することは先づ不可能に近いと見られる(但しHartline3)参照)。微小電極法は恰もこの剔出法め盲點を補う所の方法と考えられるものであるが,本法の目覺しい應用は近々10年來のものである。それにも拘らず,例えば中樞神經系の分野ではLorente de Nó4),Renshaw5),Lloyd6),Therman7),Eccles8)等の數多くの貴重な研究業績があり,又Granit9)等は網膜へ本法を應用して色覺學説の實證的批判へと進んで幾多の成果を擧げつゝある。更にGalambos及びDavis10)は之を聴神經へ應用してHelmholtzの共鳴説(一層正しくは部位説)を一氣に實證し去つた觀があるしAdrian11)は嗅覺の研究,又Gernandt12)は内耳平衡器官の研究へも本法を用いている。
Copyright © 1951, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.