研究報告
網状赤血球(2)
妹尾 左知丸
1
1三重医大病理学教室
pp.72-75
発行日 1950年10月15日
Published Date 1950/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905541
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前号に於て私は網状赤血球の網状物質が從來一般に考えられていた樣に核物質であるとするよりもポルフイリンであると考えた方が妥当である事を説き,又網状赤血球は全てが若い細胞ではなくて,幼若なものは全網状赤血球の略7/3で1/8は老癈型である事を示し,之より赤血球の壽命を計算して,兎では30日余,人間では120〜130日であるとの結論に到達した.
次に私達は病的状態に於て出現する網状赤血球に就て檢討すべく,瀉血性貧血,フエニールヒドラチン貧血等に就てこゝに増加する網状赤血球の性質を追及した所,何れも幼若型網状赤血球が著しく多く,老癈型は全網状赤血球の1/12〜1/13にまで減少している事を認めた(挿図7).之に依つてこの種貧血が著しく速かに恢復する事が理解される.然し老癈型は幼若型に比して著しく少いとはいえ,その絶対数は正常よりはるかに増加している.即ちこの時は赤血球の産生は旺盛であるが,一方その破壊も又促進されている事はこの実驗に依つて明かである.破壊促進の原因は貧血に依る酸素の欠乏に原因がある事は,試驗管内で酸素が欠乏すると赤血球の破壊が亢進する事実から推定出來るが,更に次の事実もこの推理の正しい事を示している.即ち瀉血を何回も繰返し続けて行くと,赤血球数が減少し,生体の酸素欠乏が著しくなるにつれて,老癈型網状赤血球の数は漸次増加して來る.即ちその含有率は全網状赤血球の1/8となり,更に1/4となり1/3となる(挿図7).
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