研究報告
インフルエンザヴィールスの赤血球凝集現象(Hirst現象)に及ぼす正負コロイドイオンの影響並にその本態に關する研究—(B型ヴィールス(Lee株)を用いた場合のコロイドイオンの影響について)
宮本 晴夫
1
,
赤眞 淸人
1
,
吉津 曉
1
1前橋医科大学生物学教室
pp.75-79
発行日 1950年10月15日
Published Date 1950/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905542
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1.まえがき
吾々は1)さきに溶血系に正及び負のコロイドイオンを作用せしめてその影響を観察したととろ,負コロイドイオンが溶血反應を阻止し,当量の正コロイドイオンが再び之を活性化するという興味ある事実を確認し,更にこの作用機構について種々の檢討を加えた結果,負コロイドイオンが感作血球に結合せずに補体の作用を不活性化していることを明かにし,負コロイドイオンの阻止作用量と溶血素量及び補体量との間には比例的な関係の成立することを認め,之と同樣な現象をカタラーゼに見た寺山2)等の実驗と照合するとき,補体作用を酵素系の作用と結びつける一つの絆として興味深い所見であると結論した. ,かゝる正負コロイドイオンの影響は恐らく他の種々の生物学的反應現象に於ても観察されるであろうと推測し,その一つとしてインフルエンザヴイールスの赤血球を凝集する現象(Hirst現象)3)に適用してみたところ.インフルエンザヴイールスB型(以下I. V. B. と略す)が赤血球を凝集せしめる場合に,負コロイドイオンの添加によつて血球凝集が阻止せられ,正コロイドイオンがこの負コロイドイオンの阻止作用を中和するという溶血系に見られたと大体同樣な現象を確認するに至つたので,この新知見は現今全く不詳の域を脱しないHirst現象の本態の究明に多大の興味と示唆とを與えるものと信じ,こゝにその実驗の概略を述べる.
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