展望
筋肉の物性論的研究
菅原 努
1
1三重医大附屬塩浜医院高安内科
pp.59-65
発行日 1950年10月15日
Published Date 1950/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905538
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
1.緒言
最近,生命現象の最も重大な鍵として特に蛋白質の問題が盛に研究せられるようになつて來た.この蛋白質は所謂高分子物質であつてその性質に就ては特に今までの化学や物理とは違つた幾多の新しい問題があつて,その解決には華やかな原子核物理学と並んで地味ながらもう一つの発展の道を進みつゝある化学物理即ち物性論の力をかりなければならない.
例えば高分子ではただアルブミン,グロブリン,ミオシン等といつただけではその性質は完全には示されず,夫々その環境に應じて分子の形,集合状態,相互の結合の状態等が変り,それがそれらの分子が形造る物体の性質に重大な影響を及ぼす.從つてこの領域では物理と化学とを明瞭に区別することが出來ず,その中間の形のものが大切になり,或は物理化学と言い,又或は化学物理という訳で,こゝではこれらを物性論という言葉のもとにまとめて考える.
Copyright © 1950, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.