論述
汗腺排泄管の細胞學的研究—1.腺管と排泄管との移行部の研究特にそのアポクリン性分泌に就て
伊東 俊夫
1
,
圓乘 幸
1
1東京女子醫專解剖學教室
pp.69-73
発行日 1949年8月1日
Published Date 1949/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905453
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
Ⅰ 緒言
汗腺の排泄管(汗管)は極めて長く迂曲して走る。これを起始部Anfangstück,中部mittelstück及び終末部Endstückの3部に分つ。起始部は腺體内を迂曲して走り中部は腺體から出て眞皮内を迂曲しつゝ上行し終末部は表皮内と同じく迂曲しつゝ上行して皮膚面へ汗口を以つて開口する。排泄管が汗腺の機能に重要な關係を持つことは言ふまでもない。例えば腺管に於ける分泌機能が旺盛な場合でも排泄管が細ければ汗の單位時間に於ける排泄量は少ない理である。又排泄管の1部に擴大部があつて貯藏管として汗の流出を調節することもある(高木・原田)。又排泄管が分岐するや否やも重要な問題である(Horn,Aurell等),それは若し分岐して2口を以て開口する時は1方よりは常に汗の排出なき場合が想像されかくて久野,緒方,高木,堀等の所謂不能汗腺の存在を僞瞞するからである。更に1部の學者は排泄管上皮の分泌を考へて居る。HoepkeはMöllendorffs Handbuchに於いて汗腺排泄の起始部は時に分泌機能を持つと思はれる上皮細胞によつて圍まれていると記載した。又中部上皮細胞が分泌能力を有する可能性ありとするUnnaの見解を引用した。高木・堀は猫足底に於て無腺體汗腺より汗の排出を認め排泄管の分泌を想像し,更に表皮細胞間隙の組織液が終末部へ流入し液に加はることを考へた。
Copyright © 1949, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.