Japanese
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特集 生体運動の分子機構/研究の発展
筋肉におけるエネルギー変換の素過程
Elementary process of energy transduction in muscle
原田 慶恵
1
,
柳田 敏雄
1
Yoshie Harada
1
,
Toshio Yanagida
1
1大阪大学基礎工学部生物工学科
pp.110-114
発行日 1988年4月15日
Published Date 1988/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905110
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筋肉をはじめとする生体運動の本質は,運動系を構成する構造タンパク質集合体の相対的滑りによる化学エネルギーの力学エネルギーへの変換である。現在,この滑りを分子レベルで理解する有力な仮説がない。これは,主としてわが国の研究者によって,今まで中心的仮説として学界をリードしてきた"首ふり仮説"が否定されたからである。最近の研究によって,滑りの分子機構を理解するには,タンパク質分子の大きな変形を化学反応と1:1に対応させ,それを巨視的な滑り運動に直結させる機械論的な考え方ではなく,新しい概念を必要とすることが明らかとなりつつある(図1参照)。ここでは,われわれが提唱している,"筋収縮における化学—力学反応の共役は,非化学量論的に起こる"とする新しい概念について最近の研究を通して説明する。
筋収縮におけるエネルギー変換の分子機構について,筋線維や精製したタンパク質の懸濁液を用いて研究がなされてきた。しかし,これらの系は非常に複雑で,多くのタンパク質分子を含んでいるため,平均化した信号の解析から,その素過程を演繹することになり非常な困難を伴う。最近のin vitroでの運動アッセイとビデオ顕微鏡法による個々の分子の運動の観察法の発展はめざましく,われわれはそれらを使って,もっとも単純化された必須部分のみを有する構造体を再構成し,それら個々の運動を直接観察しながら,エネルギー変換の素過程を研究することができるようになってきた。
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