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特集 細胞生物学実験マニュアル
細胞工学
マイクロインジェクション
Microinjection
菅野 義信
1
Yoshinobu Kanno
1
1広島大学歯学部口腔生理学教室
pp.307-309
発行日 1986年8月15日
Published Date 1986/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425904883
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■ 概要
人体に直接薬物を比較的簡単に注入するため注射という臨床的手法が行われるようになったのは何時頃からであろうか。近代生物学の新しい手法による研究の試みは今世紀の始めに次々と公表されている。実際当時のドイツの生理学の雑誌アルヒーフ総合生理学誌を見ると,今でも研究の方向や研究主題をいくらでも見つけることができる。1920年すでにドイツの生理学者シュミットマン女史は各種の動物の唾液腺細胞中にpHにより色の変化する色素を注入し,細胞内のpHを直接測定することを試み論文を公表している。一般に細胞は細胞膜で覆われ,細胞外の環境から物質が自由に出入することはなく,また高等動物では細胞外で体内の環境もホメオスターシスにより滲透圧他塩類イオン濃度などかなり厳密な調節を受けている。しかし細胞内に,できれば細胞内の特定位置に何か物質をしかも特定濃度,特定量を注入し,ある実験状況を与えてやると,細胞の特定性質を変化させたり,細胞に特定の条件を与えることが可能になる。これがマイクロインジェクションである。したがってまず器官,組織中の細胞か培養細胞を顕微鏡下なるべく正常な状況下で直視確認し,その細胞に主としてガラス毛細管のごとき,中腔の小さい針を細胞の特定位置に挿入し,特定物質の一定量を注入することになる。当然注入する細胞は大きいほど手技は楽になり,注入物質の分子最は小さいほど注入は容易である。
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