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特集 神経科学実験マニュアル
ニューロンの染色・標識法
HRP注入
Intracellular injection of horseradish peroxidase
吉田 薫
1
Kaoru Yoshida
1
1筑波大学基礎医学系
pp.371-373
発行日 1985年8月15日
Published Date 1985/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425904769
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■ 細胞内染色法とHRP1-3)
神経細胞にガラス微小電極を刺入して電気生理学的性質を調べ,同時に標識物質を注入して形態学的特徴を観察する細胞内染色法は,単一細胞レベルで機能と形態の対応関係を明らかにし得る有力な方法である。とくにHRP(horseradish peroxidase)による細胞内染色法は,従来の螢光色素やコバルトを使う方法と比較して優れた特徴を持ち,生理学・解剖学の分野でもっともポピュラーな手法となりつつある。
HRP法の長所として以下の点が挙げられる。注入されたHRPは細胞内で速やかに拡散して樹状突起の細部まで明瞭に染め出すことができる。染色距離は注入部から最大20〜30mm程度であるが,軸索に直接注入すれば側枝や終末部を調べることも可能である。HRPの発色処理による反応生成物は螢光色素と較べ遙かに安定で,通常の光学顕微鏡で長時間観察してもほとんど退色しない。さらにHRP反応生成物は電子密度が高く,細胞内微細構造を損なうことが少ないため,電子顕微鏡による形態解析にも適している。またHRPを含む電極は螢光色素電極と較べて電気抵抗が低く,細胞内記録の点でも有利である。
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