Japanese
English
特集 細胞の極性
腺細胞の極性
Polarity of secretory cells
藤田 尚男
1
Hisao Fujita
1
1大阪大学医学部解剖学教室
pp.197-208
発行日 1983年6月15日
Published Date 1983/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425904523
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
I.極性とは何か
試みに「生物学事典」第2版(岩波,1980)の極性polarityの項をひいてみよう。その最初に抽象的で少々わかりにくい表現であるが,「細胞,細胞集団,組織または個体が,1つの方向に沿ってその各部分相互の相対的準位と関連して形態的または生理的特性について何らかの差異をあらわすこと」と定義され,例として「腺上皮の細胞で核は基部に近く,中心体は表面近くに位置する」ことが記されている。われわれの体を構成する具体的な細胞に思いをいたすと,脊椎動物に頭と尾があるように卵細胞には動物極と植物極が,神経細胞には樹状突起と神経突起(軸索)が,上皮細胞には頂上部と基底部があって,細胞が構造的,機能的な方向性をもっているのに気づく。また形態的にこのような明瞭な極性がないと考えられる線維芽細胞,肥満細胞,大食細胞などのような結合組織細胞でも,その内部の特定の小器官(たとえばゴルジ装置)の位置にはそれなりの方向性があることが知られている。このように定義を拡大すればどの細胞でも何らかの意味で極性を有しているといえるであろう。この総説では腺細胞について,形態と機能の方向性の面から細胞の極性の問題をとりあげてみたいと思う。
Copyright © 1983, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.