講義
分化細胞のラウス肉腫ヴィールスによるガン化
梶 昭
1
1Department of Microbiology, School of Medicine, University of Pennsylvania
pp.361-371
発行日 1981年8月15日
Published Date 1981/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425903485
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はじめに
まず,なぜ分化細胞とガン化ということを組み合わせて研究するかという事ですが,分化ということが分子のレベルでまだ充分理解されていないし,更にガン化ということも本来の意味で我々に分かっていないのにも拘らず,何故この2つの未知数を組み合わせて研究を進めていくかという事を疑問に思われる方々もおられるかと思います。しかし1つの考え方として,昔からガン化という事が分化と深い関係があり,多くの例外がありますが一般にガン細胞は未分化の細胞に非常に似ている点があると云われています(Abelevら1963;Alexander 1972;Bullら1974;CoggikとAnderson 1974;GoldとFreedman 1965;Pofler,1978;Rothら1977;Rothと梶1978)。従ってこの2つの現象は組み合わせて考えた方が意外と理解しやすいかもしれないという可能性があります。更に,ガン化,ことにヴィールスによるガン化の過去の研究はあまりにもヴィールス学的に片寄ってしまっていて,主として線芽細胞のみを用いて行われて来ました。線芽細胞は一見非常に均一な細胞群の様に見えますが,よく考えて見れば色々な組織から来た細胞の混合で,しかも夫々の特長を細胞培養という云ってみれば細胞にとって異常な環境におかれたため失ってしまった細胞群であるわけです。
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