Japanese
English
特集 大脳の機能局在
総説
聴覚野の機能的構成
Functional organization of the auditory cortex
菅 乃武男
1
Nobuo Suga
1
1Department of Biology, Washington University
pp.466-473
発行日 1980年12月15日
Published Date 1980/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425903424
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音の性質は,周波数,振幅(または強さ),時間を表す3つの座標軸上に現れるパターンによって表示される。ソナグラムでは周波数を縦軸に,時間を横軸に,振幅(音圧)を線の濃淡で表す。ヒトや動物の交信音のソナグラムには3つの基本的なパターンがあり,これらが複雑に組合わさっている。交信音に含まれる情報を認識するためには,まず,その中に含まれる情報要索を抽出し,その組合わせを調べねばならない。
聴覚系の末梢では音の周波数は興奮したニューロンのある位置によって表される。一方,音の振幅はニューロンの興奮の大きさ(インパルス放電の頻度)によって,音の長さは興奮の持続時間で表される。したがって,末梢には音の性質を表すための解剖学的基礎は周波数に対してのみある。ところが,大脳皮質聴覚野では周波数はもちろん,振幅,時間,その他の聴覚情報がそれぞれ興奮したニューロンのある位置で表示されるようになっている。このようなことは,パナマ産のヒゲコウモリPteronotus parnellii rubiginosusでしか分かっていない。他の哺乳動物では,周波数の部位的表示が1975年以来再確認され,現在,方向感覚に関係あると思われる機能的構成が少し分かりかけてきた状態である。聴覚野での機能局在については厳密な削除実験なしには決まらない。
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