特集 大脳の機能局在
特集「大脳の機能局在」によせて
伊藤 正男
1
Masao Ito
1
1東京大学医学部
pp.458
発行日 1980年12月15日
Published Date 1980/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425903422
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脳幹の精巧な組織構造に比較して大脳や小脳の皮質は殆ど同じような構造がだだっ広く広がっており,一見とらえ難い漠然とした印象を与える。かつてフルーランの提唱した大脳皮質同価値説は多分にそのような印象に影響されたものであろう。脳全体が1つとして働くという考え方には何か神秘的な魅力も感じられて,かつては好んで議論されたものであった。その一方では,ブローカ,ジャクソン,フリッチとヒッチッヒらの古典的研究により提出された機能局在の考えが次第に発展し,今日大脳皮質の機能地図ともいうべきものがますます詳細な姿をとりつつある。ブロードマンが顕微鏡組織像の違いに基づいて分割した50余の大脳皮質領域のすべてについて詳細な機能的なラベルが貼られる日もそう遠くはないとの期待が抱かれる。
このような機能地図を作ろうとする努力はかつて大脳の機能研究の大部分を占めていた。換言すれば,それ以上のことはしたくても出来なかったといえる。このことは「それがどのようにして起こるかを考えるより,それが何処で起こるかを調べる方が楽である」というペンフィールドの言葉に明快に表現されている。どうやって起こるかを調べるには程遠い研究段階で,先ず何処で起こるかを明らかにすることが重要な課題であった時代,単調で労の多いマッピングの実験に精根を打込んだウールセイやスナイダーらの努力に敬意を表したい。
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