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特集 生体の科学の現状と動向
総説
分子遺伝学—現状と動向
Molecular genetics: present and future
石浜 明
1
Akira Ishihama
1
1京都大学ウイルス研究所
pp.22-28
発行日 1977年2月15日
Published Date 1977/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425903164
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Ⅰ.分子遺伝学1960年
遺伝情報伝達の分子機構についてわれわれがいまもっている知識の源泉は,1960年に求めることができる。Crick(1957)が,「一般原理」(central dogma)(図1)を提唱したあとは,WatsonとCrick(1953)が明らかにした遺伝子DNAの二重らせん構造とそれに由来する反応性から出発して一般原理の全過程に参画する諸実体を同定し反応様式を明らかにすることがとりわけ重要であろうと考えられていた時代であった。その前年に,ラット肝でその存在が指摘されていたRNAポリメラーゼは,その年になると大腸菌などの細菌でも確認されて遺伝情報発現の研究の新たな飛躍の基礎が準備された。
一方,JacobとMonod(1960)は,その年発刊され今日までこの分野の情報交換の中心的役割を果してきた雑誌Journal of Molecular Biologyに,遺伝情報発現制御に関する歴史的論文を発表した。酵素β-ガラクトシダーゼは,大腸菌では,培地にβ-ガラクトシド結合をもつ糖を添加したときに合成される誘導酵素である。酵素誘導機構を遣伝学・生化学・生理学を動員し解析して彼らが到達した結論は,酵素生産の制御は,DNAからの情報発現レベルで,負の様式,つまり発現量を抑制減少させる方式でなされるというものであった。
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