特集 産業医学と臨床検査
Ⅰ.総論
1 産業医学の現状と動向
土屋 健三郎
1
Kenzaburo TSUCHIYA
1
1産業医科大学
pp.1256-1260
発行日 1984年11月1日
Published Date 1984/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542912344
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□はじめに
臨床検査はその文字が表すように,病人の検査,あるいは病気の診断のための検査であった.しかし,その後,医療は病人の管理だけでなく,健康管理,すなわち健康者を対象として個々人の健康の維持や潜在性の健康からの〈ズレ〉の発見をも含めるようになった.産業医学の領域では,戦後,その大きな目的は結核の早期発見であり,技術的にはX線間接撮影がその主流を占めていた.その後,特殊健診や一般健診の普及につれて,いわゆる臨床検査が産業保健の分野で頻繁に用いられるようになった.したがって現在では,臨床検査技師が病院のみならず,健康診断機関を含む多くの保健領域で活躍するようになったのは周知のとおりである.
現在まで,健康レベルは身長,体重などの主として形態学的な指標で表されていたが,今後は,個人のみならず地域や職場集団の健康レベルが,血液所見,肝機能,循環機能,さらには精神・心理状態を含めて,総合的に評価されなければならない時代に来ているのである.
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