特集 生体と化学的環境
特集「生体と化学的環境」によせて
須田 正己
1
1愛媛大学医学部・第一医化学教室
pp.181
発行日 1976年6月15日
Published Date 1976/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425903120
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生体と化学的環境というあまりにも幅広い領野は,共通した話題が乏しい。特別にある生物を実験室で,ある目的の単なる材料として利用する場合(たとえば代謝酵素の研究など)は別として,生体と化学的環境になると話は別になるからである。というのは,各生物がそれぞれの環境のなかでsurvive(生存と増殖)する仕方は独特であり,むしろ共通項はいつてみれば物質代謝の方式(従属栄養か自立栄養がの区別があるが)ぐらいであろう。この点をよくまとめた雄大なmapを名著Animal Behaviorからお借りして説明したら判りやすいと思う。図のように,各生物はそれぞれの環境に対して優位な仕方でsurviveとするのであつて,それゆえ生体と化学的環境という内容は,この行動の優位性が下敷きとなつているのである。環境の因子としては,栄養(水,塩類やO2,CO2も含まれる),温度落差,潮の干満,明暗,重力,湿度などの他,生物間の共存もあり,生物側には,交配した卵から→幼時→成熟→老化→死という生涯があつて,この間,環境の諸因子に誘導された日周,月周,年周そして上記のような生涯のリズムがある。動植物を通じてこの生涯の長さについては,生物学的法則があつて,sizeの小さいものは代謝速度が大きく,寿命が短いのに対しsizeの大きなものは代謝速度が小さく,寿命は長い。しかし人間だけはスケールアウトしていて,百歳以上生きられるが,その原因は不明である。
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