話題
NIHでの研究生活と印象
福田 潤
1
Jun Fukuda
1
1Laboratory of Neurophysiology, National Institutes of Health
pp.492-496
発行日 1974年12月15日
Published Date 1974/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425903028
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「あんたの細胞はどんな具合なの?」。毎朝,黒人のテクニシャン,マリーがこう尋ねるのが朝のあいさつになつています。「素晴らしいもんだよ,マリー」と答えられる日は,私の実験もきつとうまくゆくでしよう。そのような日はそうたびたびあるものではなく,たいていは「まあまあだな,マリー」。ときには,「ひどいもんだよ,まつたく。皿の中がサハラの砂漠みたいで,何も生きちやいないよ」。こんな日にはどういうわけか他の人の組織培養をした細胞の具合も悪くなつており,皆がマリーにいろいろ細々した注文をつけます。たとえば「ここでタバコを吸つたり,コーヒーを飲んだりするのやめようよ。マリー」。マリーも,他人の細胞の具合はともかく,大好きなコーヒーやタバコをよせとまでいわれるのがとてもつらいらしく,そこで毎朝顔をあわせると「あんたの細胞の具合どうなの?」。
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