海外だより 印象記と研究室だより
NIH留学記
倉富 一興
1
1順大生化学教室
pp.97-98
発行日 1965年4月15日
Published Date 1965/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425902617
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すでに幾度か報ぜられたアメリカないしNIH留学記であるが,最近の知見をとのことなので,ここに拙文を記す次第である。筆者は1962年4月始めよりNIHのNational Heart lnstituteのLaboratory of BiochemistryのChief,E. R. Stadtmanのもとで,有機酸の代謝を嫌気性菌を用いて研究するため,約2年7カ月滞在し,そのめぐまれた研究環境とStadtmanの温容と有益な討論の機会に接しえたことを心から有難く思うものである。それ故まずこの研究室を中心としてNIHの研究陣のうち,生化学の面を主とし,他の知見を含めて記すことにする。
E. R. Stadtman研究室はまず嫌気性菌を使つてのVB12の関与する代謝径路を彼夫妻が中心となつて進められており,筆者もその一員として研究の進行上の主体性を与えられたことを喜んでいる。すでにカリフォルニア大学のBarkerらのglutamate mutase,Stadtmanらのmethylmalonyl-CoA isomeraseの作用機構にVB12が重要な役割を演じているなど著名な研究がいくつかあるが,まだ比較的新しいこのビタミンは,その生理作用が完全に解明されたとはいいがたく,核酸や蛋白質生合成,また糖,脂質代謝に対する作用など研究成果が期待されている。
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