実験講座
電子顕微鏡写真像の光回折と光濾過
大槻 磐男
1
1東京大学医学部薬理学教室
pp.222-229
発行日 1971年10月15日
Published Date 1971/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425902902
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Ⅰ.はじめに
電子顕微鏡写真上に見られる周期像は,光回折(optical diffraction)を行なうことによつて結晶解析の手法を適用することができる。1964年にKlugとBergerにより報告されたこの方法はX線回折,電子線回折など従来の方法では扱うことができないような微小な範囲に局在する周期構造の解析を可能にしたのである1)。
さらにKlugとDeRosierは光回折を発展させた光濾過(optical filtering)と呼ばれる次に述べる様な方法を案出した2)。電子顕微鏡の焦点深度は通常観察する試料に比べるとはるかに大きいから,電子顕微鏡写真像は三次元構造の平面への投影像と考えられるが,微小な粒子の場合,電子線源に向かう面と反対の面の二つの面の投影像となる。したがつて表面に規則的な構造が存在しても電子顕微鏡では一見無秩序な像が見えるに過ぎないことが多い。このような場合でも光回折を行なうとそれぞれの面の規則性に対応する回折点が出現する。この際片側の面に起因する回折光を透過させ,他側による回折光は遮つて像を再合成すると片側の面の像を元の電子顕微鏡写真像から抜き出すこと(濾過)ができる。光の性質を巧妙に利用した方法といえよう。
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