文献案内・15
小脳の生理の研究をするにあたつてどんな本を読んだらよいか
伊藤 正男
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1東京大学医学部生理学教室
pp.150-151
発行日 1968年6月15日
Published Date 1968/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425902774
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小脳の生理について初心者むけの参考文献を紹介するようにとのことであるが,筆者自身5年ほど前までは小脳のことについては普通の教科書にかいてあること以外は何もしらない,いわば門外漢であつた。それがたまたまダイテルス核細胞を手がけたところ,これに対する小脳プルキンエ細胞の直接投射を通して,ちようど小さな窓からのぞき見たような具合に,小脳内の諸現象が次々と目に入つてきた。小脳についての勉強を始めたのはそれからであつて,したがつてここでは結局のところ筆者自身の勉強過程を逐一紹介するようなことにならざるを得ない。この点はじめにおことわりしておきたい。また生理学の教科書ないし類似の文献はすでに参考にされたものとして,ここではとくにふれないでおく。
筆者が手始めに大きな感動をもつて読んだのはG. Moruzzi著「Problems in Cerebellar Physiology」C. C. Thomas(1950)である。講演原稿をもとにした比較的小冊子の本で,Ⅰ.姿勢トーヌスに対する小脳抑制,Ⅱ.姿勢トーヌスに対する小脳促通,Ⅲ.小脳と大脳運動野との機能的連関.Ⅳ.自律系統での小脳作用,の四章にわたつて論じてある。題名の通り,小脳についての問題点を明らかにし,これに対して古典的な刺激実験の結果がきわめて理路整然と分析され,さらにこれを手がかりに小脳の神経機構についての明快な推論が展開されている。
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