実験講座 細胞内成分の分画・6
動物細胞核分離法および脳細胞核の分別分離法(1)
加藤 尚彦
1
1東京大学医学部脳研究所
pp.131-135
発行日 1968年6月15日
Published Date 1968/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425902771
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近年の核酸代謝の研究や細胞生物学の発展にともなつて,動物組織の細胞核分離法が工夫されてきた。臓器としては核の得られやすい小牛胸腺・核酸や各種の酵素の研究に適当で,大部分1種の実質細胞からなる肝臓などが,主な材料として用いられている。また癌に対する興味から種々の腫瘍組織についても適切な方法が工夫されてきている。
一方,中枢神経組織はノイロン(神経細胞)と3種のグリア細胞(アストログリア・オリゴデンドログリア・ミクログリア)から成つており,他の体組織にくらべて複雑な構成をもつている。ノイロンは電気的な現象からも活発な機能を営むと思われ,また再生がまつたく不能であり体細胞の内でももつとも成熟したものの一つである。3種のグリア自体もそれぞれ特徴的な構造をもち,組織培養や病理学的な所見から,それぞれ特殊な機能をもつと考えられている。これらの細胞の細胞生物学的研究には,現在は特殊なミクロ技術が用いられるが,得られる材料が微量のため微量定量が可能な範囲で研究されているにすぎない(Hydén,Edström,Lowryなど)。ノイロンの軸索やグリア細胞の細胞質は複雑にからみあつており,これらの細胞を単離して,種々の生化学的測定に必要な量をあつめようとしても不可能である。
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