実験講座
位相差顕微鏡と干渉顕微鏡(Ⅳ)—干渉顕微鏡とその利用法
水平 敏知
1
1東京医科歯科大学
pp.39-47
発行日 1968年2月15日
Published Date 1968/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425902762
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17巻4,6号および18巻2号の3回にわたり位相差顕微鏡の解説を試みた。まだ充分ではないが,このあたりで干渉顕微鏡に目を転じてみることにしよう。
位相差法は無染色の標本や生きている細胞を観察するにはきわめてすぐれた装置であるが,位相差法にも大きな欠点がないわけではない。そのもつとも大きい一つは,位相差物体を位相差法でみると,17巻6号の34頁第16図に示したように像が正しく表現されていないということである。その結果像の周囲に明るく光る光輪haloを生じたり,互いにoverlapする回折像のために試料本来の像がこわされる恐れがあるばかりか,もしも封入剤の屈折率,使用波長など条件を規定した上で試料の位相差,長さ,太さなどの計測を試みたいと願つてもその結果には信頼度が少ない。つまり位相差法は観察には無染色の透明標本の観察にはコントラストもあり,よく適しているが反面計測顕微鏡的価値はほとんど期待されない。位相差法のもとで細胞の生活条件の差によるコントラストの差が見えたとしてもそれは定量的判定の試料としては不充分である。この目的にかなうためには位相差物体である試料を通つた直接光と回折光があまり強い光学的変化を受けないで干渉し合うことが必要である(17巻6号31〜35頁)。そのためには位相差顕微鏡の生命ともいうべき位相板を用いないで他の方法をとらなければならない。
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