巻頭言
生体の情報
大島 正光
1
1東京大学
pp.1
発行日 1968年2月15日
Published Date 1968/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425902756
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最近「情報処理」とか「情報の科学」とか情報についての情報がきわめて多くなつてきている。生体の現象はその点では生体の示す情報であることには変わりはない。しかしながらこれらの情報は生体のもつているメカニズムの中の情報であつて,そのメカニズムを知るのにも役に立つものである。ところが生体のもつているメカニズムには種々の点からのアプローチが行なわれている。
一体このメカニズムをどのように理解すべきか。ある場合にはその一つの情報が何によつて起こるかを究明することも大切であるし,またその情報の動態を明らかにすることもメカニズムの究明につながつている。また環境との相互の関連性,刺激と反応の相互関係,行動科学といわれる一人の個体としての動態もあるし,また一つの臓器,組織,細胞に至るまでの動態もあろうが,その中に一つ「全機性」といわれるものもみのがすことのできないものであろう。この「全機性」と呼ばれる言葉は橋田先生の初めて使われた言葉と記憶をしているが,これを機能をもとに考えるならば全機性とは種々の機能の相互の関連性を示す言葉である。生体は相互に関連をもつた機能の有機的な集まりであるとみることができるであろうと思われる。すなわち個々ばらばらに機能があるのでなく,それらは相互に関連性をもつて全体が構成されていろとみるのである。
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