文献案内・13
発生,分化の生化学的な研究をはじめるにあたつてどんな本を読んだらよいか(1)
岡田 節人
1
1京都大学理学部動物学教室
pp.264-267
発行日 1967年10月15日
Published Date 1967/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425902745
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編集部からのご依頼のテーマの意味には,いろいろ多面的なものが含まれているようである。紹介を依頼されているのは「発生生物学」の入門書ではない。発生,分化の「生化学的研究」のためのものが特に要求されているし,また,「研究をはじめるにあたつて」という条件もついている。したがつて,いま研究をはじめようとしておられる方が,過去にどんな経験と素養をもつておられたかによつて,おすすめする品目もがらりと変つてくるはずである。しかも,現在の発生生物学は,各自の経験と興味に応じて,恐しいほどに左右されるだけの多様性をもつているから,各個人については,あるいは適切な助言も可能かもしれないが,一般的なものといつてはほとんど不可能に近いような状勢ではないだろうか?
極端な例を考えてみよう。わが国では発生とか分化とかいつた問題は,理学部の生物学系(それも,主として動物学系)で,専門として教育される。これらの教科では,今までのところ,卵や発生中の胚の詳細な形態学的事実が中心となるのがふつうである。いま,こうした素養をもつ方が,発生,分化の生化学的研究をはじめたい,と考えられるなら,まず手にすべき本は,生化学や分子遺伝学の基礎的な参考書ということになろう。この逆の場合だつてありうる。
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