文献案内・14
発生,分化の生化学的な研究をはじめるにあたつてどんな本を読んだらよいか(Ⅱ)
岡田 節人
1
1京都大学理学部動物学教室
pp.318-321
発行日 1967年12月15日
Published Date 1967/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425902754
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前回で,発生生物学に関する著書を三つのカテゴリーに分けて,その第二にあたるものの,題名だけを紹介するところまで述べておいた。さて,これら四冊は,いずれもが,1960年代の読者のための発生生物学への手引書である。Spratt,Waddington,Ebertのものでは正常の発生過程に関する形態学的な記述は,最少限に止められている。だから,「発生の生化学的な研究」を志す方が,材料の選択や,その取り扱いについて,なんらかの知識をこれらの著書からえられようとすれば,たいへんに期待はずれ,ということになるだろう。しかし,発生という現象の中に,これから機構を分子的に探るような糸口があるか,という指針にはなるであろう。しかし,いずれも,ごく小型の本なので,とても詳しいことは判らない。また,技術的にもどんなに困難が沢山あるかも述べられていないから,ともすると,読者に今後の研究にあまりに甘い見通しでも持たせる危険もあるわけである。
しかし,これらの書物を十分注意深く読み通すことは,大変有益なことになると,私は考えている。Waddingtonのもの(日本訳出版の予定がある)は,この中でも一ばん手軽なもので,読みようによつては,手引書としてきわめて秀れたものではある。過去に何冊ともなくこの種の著書をものしてきた,この著者の書物の中でも,これはできのよいものである。
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