特集 病気の分子細胞生物学
11.皮膚疾患
IgA天疱瘡
橋本 隆
1
Takashi Hashimoto
1
1久留米大学医学部皮膚科
pp.480-481
発行日 1999年10月15日
Published Date 1999/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425901771
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[疾患概略]
自己免疫性水疱症は抗皮膚自己抗体により,表皮細胞間ないし表皮基底膜部接着の障害を生ずる疾患である。表皮細胞間接着にはデスモソームが,表皮基底膜部接着にはヘミデスモソームが最も重要である。事実,すべての自己免疫性水疱症の抗原物質はこれらの部位に局在している。デスモソームにおける細胞間接着に直接関与している細胞膜蛋白にはデスモグレイン(Dsg)群とデスモコリン(Dsc)群があり,デスモソームカドヘリンとよばれる。いずれの群にも3種の蛋白が存在し,Dsg 1-3,Dsc 1-3とよばれる(図1)。IgG抗表皮細胞膜自己抗体を示す疾患の代表は古典的天疱瘡で,落葉状天疱瘡と尋常性天疱瘡とに大別される。前者の抗原はDsg 1であり,後者の抗原はDsg 3である1)。
最近になり,IgA抗表皮細胞膜自己抗体を示すIgA天疱瘡も知られるようになった2,3)。IgA天疱瘡にも2種の亜型が存在し,一つは角層下膿疱症(subcorneal pustular dermatosis;PD)様の皮疹を示し,組織学的に角層下膿疱を呈するSPD型であり,この患者血清は表皮上層にのみ反応する(図2a)。もう一つは異型な膿疱性皮疹を示し,組織学的に表皮全層の膿疱を示すintraepidermal neutrophilic IgA dermatosis(IEN)型であり,この患者血清は表皮全層に反応する(図2b)。
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