特集 病気の分子細胞生物学
1.筋・神経・精神疾患
周期性四肢麻痺
金澤 一郎
1
Ichiro Kanazawa
1
1東京大学医学部附属病院神経内科
pp.357-358
発行日 1999年10月15日
Published Date 1999/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425901722
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[疾患概略]
周期性四肢麻痺とは,血清カリウムの変動に関係して一過性の四肢麻痺発作を呈する疾患である。発作の間隔は一定ではなく,麻痺は四肢にとどまり,呼吸筋や脳神経領域の筋にまで及ぶことはまれである。非発作時には全く症状はないが,時には非発作時にも筋力低下が持続し,筋萎縮をきたすこともある。発作初期に血清カリウムが低下している場合と上昇している場合とに区別される。
低カリウム血性周期性四肢麻痺は,欧米では多くが常染色体優性遺伝する症例であるが,わが国では甲状腺機能亢進症に伴う症例が多く,遺伝性の症例は少ない。いずれの場合も夕食での過食の翌朝に発作を生じることが多い。激しいスポーツ,アルコール多飲などによっても誘発されることがある。発作の持続は数時間以内が多いが,時に2~3日のこともある。甲状腺機能亢進症に伴う場合は若年男子が多い。遺伝性の場合には10~20歳代の男女に初発するが,理由は不明だが男女比は2:1である。年齢が上がるに従って発作の頻度も程度も軽減する。発作時には経口的KCI投与が有効である。Acetazolamideの経口投与で発作頻度を少なくできる場合もある。発作中の麻痺筋の静止膜電位記録では,正常筋のそれに比して20~40mV程度浅いことから,脱分極ブロックによる麻痺であろうと考えられているが,低カリウム血症との関係はいまだ解明されていない。
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