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特集 幹細胞研究の新展開
中枢神経系幹細胞
Neural stem cells
桜川 宣男
1
Norio Sakuragawa
1
1国立精神・神経センター神経研究所疾病研究第5部
pp.196-202
発行日 1998年6月15日
Published Date 1998/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425901570
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中枢神経系の発達,機能および可塑性についての研究にとっては,脳移植術は極めて有効な手段となってきている。過去には,末梢神経組織の脳内移植術から得られた成績が,神経成長に関係する成長因子の概念を構築するのに役立った。近年,移植術は神経系の分化,遊走,シナプス形成に関わる種々の因子の解明に大きな役割を演じるようになってきている1)。中枢神経系移植術に関する最も注目すべき研究は,移植された神経組織は損傷部位の脳に取り込まれ,損傷された神経機能を有効に代償することができるとの証明である2)。さらに移植研究に分子細胞学的技術が導入されたことにより,中枢神経系の修復機転に関与する因子の同定が進んできた。ちなみに中枢神経系への“ex vivo”遺伝子伝搬に関する大部分の研究にはin vitroで増殖し,操作が容易である非ニューロン組織が多く用いられてきた3)。臨床的にはパーキンソン病に対する副腎髄質の尾状核への移植や交感神経節移植手術が行われている4)。しかし脳移植と遺伝子操作にとっては,神経細胞のほうがより優れた利点を持つことはいうまでもない。実際,外国では胎児腹側中脳を用いた脳内移植術がパーキンソン病の治療に用いられてきている5-7)。倫理上の問題より,胎児組織の使用には必ずしもコンセンサスが得られる訳ではない。
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