特集 病態を変えたよく効く医薬
はじめに
野々村 禎昭
pp.664
発行日 1995年12月15日
Published Date 1995/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425901033
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1980年代後半にWHOはこの10年に人類に貢献した医薬十傑を発表した。そのなかにわが国産のものが二つふくまれていた(本特集にのせられている)。ひと昔前のわが国の医薬産業を考えてみると,これは画期的なことであった。一般の科学研究にもいえることであるが,これまで日本人はものまねが上手で,これを精緻にしあげてしまうと考えられていた。特に医薬産業は自己開発をやるより,外国製のものを多少手を加えて売り出すのが当然と思われていた。この時状況は大きく変わってきていたのである。現在,わが国では独創的な多くの医薬が開発されつつあり,激しい競争が行われている。一方,この間の医薬の進歩は著しいものがあり,よく効く薬によって病態像自体,病気の社会的位置づけまでが変化してきている。例えば,本特集でとりあげた一番古いものであるH2レセプターインヒビターの出現によって,町なかにあった多くの胃腸外科病院の看板が見当たらなくなる位,胃潰瘍手術例数が減ってしまったのである。
本特集はよく効くという評価を得ている医薬のうちわが国の貢献度の高いものを選び,それらの医薬の開発の歴史を主として開発にたずさわった方々に書いていただいた。本誌のような基礎的な雑誌としては珍しい観点であろう。また,これらの薬物の生体における作用機序についても,多くの方の手をわずらわした。
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