特集 動物の行動機能テスト―個体レベルと分子レベルを結ぶ
10.線虫
行動測定法概論
桂 勲
1
1国立遺伝学研究所遺伝情報研究センター組換え研究室
pp.602-605
発行日 1994年10月15日
Published Date 1994/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900851
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C. エレガンス
土壌自活性線虫C. エレガンス(Caenorhabditis elegans)(図1)は,発生と神経系の分子生物学的研究のために選び出されたモデル生物であり,以下のような性質をもつ1,2)。(1)大腸菌を餌として寒天上または液体中で簡単に飼える。世代時間が3日なので,短期間に増やすことができ,成虫の体長が1.2mmなので,多数の個体を扱うことができる。(2)性決定はXO型であり,自家受精する雌雄同体と雄がいる。雌雄同体は1匹で子孫を残せるが,雄を使うと交配もできる。(3)ゲノムサイズが高等動物の約1/30であり,染色体のほぼ全領域について対応する遺伝子クローンが入手できる。現在,ゲノムの全塩基配列が決定中であり,1998年末には完成の予定である。(4)細胞数が少なく(雌雄同体の成虫で体細胞核959個),細胞の数・位置や細胞分化に関する個体差がほとんどないので,全細胞に個別の名前が付けられている。さらに受精卵から成虫に至る全細胞系譜3,4)と,302個のニューロンからなる神経系の全回路構造5)が知られている。したがって,変異体における発生や神経回路の形態異常を,特定の細胞の異常として記述することができる。
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