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1 . はじめに
血漿中のプロテインSは,補体系制御因子であるC4b結合蛋白(C4b binding protein;C4bBP)と結合した結合型(60%)と遊離型(40%)の2つのフォームがあり,活性化プロテインC(activated protein C;APC)に対する補酵素活性を示すのは,遊離型のみである.プロテインS異常症は,反復して血栓症を発症することが知られており,特にアジア人に高頻度に存在することが近年数多く報告されている1~11).日本人では,プロテインS徳島という遺伝子変異が静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism;VTE)リスクファクターの1つとして注目されている5,7~9,11~13).したがって,プロテインS活性低下を伴う遺伝子変異の検出は,日本人のVTEの予防,さらにアジア人の血栓症の病態解明におおいに役立つものと思われる.
プロテインS徳島のような遺伝子変異は,血中に分泌されるプロテインS抗原量は正常であるが,活性が低下するⅡ型異常症である14).よって,プロテインS活性とプロテインS抗原量を測定し,プロテインS比活性(比活性=活性/抗原量)を求めることで,間接的にプロテインS遺伝子変異を検出することが可能であると考えられる.注意することは,測定する抗原量と活性両方とも遊離あるいは総プロテインSでなければならない.
現在,総プロテインS活性測定法は存在しないため,遊離プロテインS抗原量と活性の測定を行うことで,プロテインS比活性を求めることになるが,測定系の性能が不十分であるため,プロテインS遺伝子変異の検出は困難である9).遊離プロテインSは総プロテインSに比べ血中濃度が低く,測定誤差の影響を受けやすいので,プロテインS遺伝子変異検出には,総プロテインSの測定が最適であると思われる.しかし残念ながら,総プロテインS測定法には,用手法で操作が煩雑な抗原量測定法のみで,活性測定法は存在しない.そこで筆者らは,汎用自動分析装置で測定可能な,ラテックス凝集法による総プロテインS抗原量測定法と比色法による総プロテインS活性測定法を開発した(投稿中).
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