寄稿
勝木保次先生の研究と想い出
亀田 和夫
1
,
柳沢 慧二
2
1北海道大学歯学部
2鶴見大学歯学部
pp.391-393
発行日 1994年8月15日
Published Date 1994/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900761
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どんなに努力する人にだって天は何時も優しいとは限らない。しかし天が一目だけ許した先手を,勝木保次先生は決して逃さなかった,と私は思う。
勝木先生が研究に入った昭和初年ごろはドイツ圏の科学がなお輝いていた。ベケシの一連の論文「聴覚理論のために(Zur Theorie des Hörens)」が次々と発表されていた。あるとき私は先生の蔵書の中に私費購読のドイツの音響学誌を発見して驚いた。さらにオームの音響法則を巡るオームらの原文をタイプ謄写したものがあった。大変な手数でしたろう,と申し上げると「いや,家内にさせたから」とやや頬を赤らめられ,拝借のお願いには「いいけれど,数学ばかりだよ」と言われる。何ほどの事やあらんと持ち出したが,歯が立たず,白状すると未だにお返ししていない。
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