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特集 滑面小胞体をめぐる諸問題
ガン(細胞株BeWo)における糖鎖形成異常
Aberrant glycosylation of hCG in choriocarcinoma cell line BeWo
榊原 隆三
1
Ryuzo Sakakibara
1
1長崎大学薬学部薬品生物化学教室
pp.698-701
発行日 1993年12月15日
Published Date 1993/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900685
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近年,生理活性糖タンパク質の活性発現において,その糖鎖構造の重要性が注目されている。糖タンパク質は,細胞内輸送のメカニズムと連関したタンパク質部分の合成,糖鎖の付加およびプロセシングなどの生合成過程を経て,完成した構造を獲得する。しかし多くの場合,糖鎖構造には多様性があり,さらに細胞のガン化によりその構造は大きく変化していることが明らかになってきている。このような観点から,ガンや病気などで起こる細胞の何らかの変化と,その細胞の産生する糖タンパク質,糖脂質などの糖鎖構造の変化との関連性を明らかにする研究として糖鎖生物学,糖鎖病理学とよぶ新しい研究分野が生じてきた。
糖タンパク質ホルモンであるヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)は,非共有結合した2つの異なるサブユニットα,βから構成されている。hCGは正常胎盤および絨毛癌組織のトロフォブラスト1-3),およびそれ以外にいくつかの悪性腫瘍4,5)で産生されている。hCGの両サブユニットは,それぞれ2本のN-結合複合型糖鎖を含んでいる。βサブユニットは,N-結合糖鎖に加えて4本のO-結合糖鎖をいずれもC-末端領域にもっている6)。妊婦尿から得られた正常hCGのN-およびO-結合糖鎖の構造7-14),さらにホルモン活性発現における糖鎖構造の重要性を示す多くの研究がある15)。
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