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特集 滑面小胞体をめぐる諸問題
走査電子顕微鏡でみた滑面小胞体
Smooth Er observed by SEM
田中 敬一
1
Keiichi Tanaka
1
1聖隷クリストファー看護大学
pp.643-647
発行日 1993年12月15日
Published Date 1993/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900672
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小胞体は細胞の種類によって,また同じ種類の細胞でもその機能状態によって多少異なる形態をとるといわれている。粗面小胞体は主として一つの機能,すなわちタンパク合成を司っているが,滑面小胞体の方は,いろいろな化合物の水酸化,ステロイドホルモンの合成,イオンの能動輸送など,細胞によっていろいろな機能を行っている。したがって,粗面小胞体はほとんどのものが扁平嚢状であるのに対し,滑面小胞体は管状体の網,または叢,扁平嚢状,胞状など,いろいろな形態をしめしている。
SEMによる滑面小胞体の観察は1976年,Naguro1)が膵臓外分泌部の細胞で見たのに始まる(図1)。当時はまだオスミウム-DMSO-オスミウム法(以下,O-D-O法と略す)が開発されておらず,細胞内構造は細胞基質に埋没され影のようにしか見えなかったので,無理にイオンエッチングによって剖出していた。Naguroの用いた標本もエッチングなしであったため,他のすべての細胞に細胞内構造は見られなかった。しかしその中で,たった一つの細胞ではあったが,滑面小胞体が立体的に剖出されていたのである。この細胞が何細胞なのか,またなぜこの細胞だけがこのような状態になったか結局わからずに終わったが,走査電子顕微鏡による細胞内構造観察の,発展過程における重要な一里塚であったことは確かである。
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