今月の主題 肝疾患
技術解説
肝疾患と走査型電子顕微鏡
西 正与
1
,
市田 文弘
1
,
武藤 正樹
2
,
藤田 恒夫
2
1新潟大学第3内科
2新潟大学第3解剖
pp.259-270
発行日 1980年3月15日
Published Date 1980/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542915402
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走査電子顕微鏡(SEM)が肝組織学の研究に応用されて,今まで二次元的切片から再構築して理解していた肝の立体構造を,直接に観察できるようになった.特に肝臓の特別な毛細血管である類洞の内面や毛細胆管の走行を広い範囲にわたって同時に観察できる点が特徴で,光顕や透過電子顕微鏡(TEM)では理解できなかった構造間の位置関係が,手に取るように把握できるようになった.これらの進歩の基礎にSEM標本作製の改革があり,①灌流による細胞表面の洗浄,②タンニン酸オスミウム法による導電性の確保,③凍結割断法と臨界点乾燥法の組み合わせによる正確な形態保存が確立されてきたことは言うまでもない1).
本稿ではSEMを用いて肝内胆管系の立体構造,類洞やディッセ(Disse)腔の位置関係を提示する.更にそれらの構造が疾患によってどのように修飾されるかを,ヒトの肝生検材料,実験ラット肝を用いて観察した所見を紹介する.
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