特集 現代医学・生物学の仮説・学説
7.疾病
腫瘍抑制
野田 亮
1
1癌研究会癌研究所ウイルス腫瘍部
pp.602-605
発行日 1993年10月15日
Published Date 1993/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900661
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概説
突然変異説:1970年代,がんの主要な原因として「放射線,化学発がん物質,がんウイルス」の3つが想定されていた。これらはいずれも,染色体DNAの構造変化を惹起する活性をもつことから,がんは体細胞における突然変異の結果生ずるものと考えられた。突然変異に関する当時の知識は,おもに細菌およびそれらを宿主とするウイルスやプラスミドの研究から得られたものであったが,遺伝学的な考察を行う場合,細菌と高等生物との間には2つの本質的な違いがある。
すなわち,細菌は単細胞生物であり,その染色体数は一倍体であるのに対し,高等生物は多数の細胞の集合体であり,体細胞の染色体数は通常二倍体である。このため,細菌における「劣性変異」,すなわち遺伝子の不活化(破壊)がそのまま個体の形質として表現されるのに対し,高等生物における劣性変異は,いつどんな細胞におこったかによって個体レベルでの表現様式に大きな違いを生ずる。
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