Japanese
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特集 細胞接着
胃癌の転移と免疫グロブリン・スーパーファミリー分子
Metastasis of gastric carcinoma and molecules in the immunoglobulin superfamily
小山 捷平
1
Shohei Koyama
1
1筑波大学臨床医学系内科
pp.321-328
発行日 1993年8月15日
Published Date 1993/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900578
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胃癌は胃粘膜上皮から発生する。すなわち胃固有腺である幽門腺,胃底腺では腺頸部の腸上皮化生腺では腺底部のおのおのの細胞分裂帯より発生する1)。それにひきつづく癌細胞の生体生着様式は不明のことが多いが,癌化した細胞は増殖し腺頸部,腺底部を破壊し粘膜固有層に拡大浸潤していく。その際,癌細胞は分裂増殖している正常の粘膜上皮細胞の流れとともに生体から排除・脱落することなく浸潤・増殖していく。さらに周囲の細胞外基質蛋白(ラミニン,フィブロネクチン,コラーゲン)に接着し,それを足場に一部は粘膜筋板を突き破り粘膜下層,筋層,漿膜層へと浸潤・増殖をしていく。この間一部は脈管にも浸潤する。脈管に浸潤した癌細胞は血管内皮および基底膜に接着し,その後は原発巣のときと同じメカニズムで転移先の臓器に浸潤・増殖する。したがって,癌細胞と癌細胞の接着,癌細胞と非癌細胞(線維芽細胞,血管内皮細胞,血小板,リンパ球など)との接着は癌細胞の浸潤・増殖,転移においてきわめて重要であり,それに関与する接着因子の発現や機能の変化は癌の浸潤・転移能獲得に大きく関与していることが考えられる。
これまで,癌転移過程に関与する接着分子としてカドヘリン・ファミリー分子,免疫グロブリン(Ig)・スーパーファミリー分子,インテグリン・ファミリー分子,セレクチン・ファミリー分子,CD44ファミリー分子などがあげられる。
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