特集 〈研究室で役に立つ細胞株〉
Ⅶ.その他の細胞株
昆虫細胞
ヨトウガ脂肪体由来細胞:NIAS-MaBr-85
三橋 淳
1
1東京農工大学農学部応用昆虫学教室
pp.542-543
発行日 1992年10月15日
Published Date 1992/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900507
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■樹立の経緯
ヨトウガは野菜などの重要害虫であり,その生物学的防除法開発の一つとして,核多角体病ウイルスの利用が考えられている。このウイルスの大量生産法を開発するために,宿主のヨトウガの細胞系を樹立することを計画した。ヨトウガの各種組織の初代培養を行い,卵巣,脂肪体,血球の培養からそれぞれ細胞系を樹立することができたが,ここでは幼虫脂肪体由来の細胞系の一つの樹立について述べる。
材料の昆虫としては無菌的に飼育したヨトウガ幼虫の成熟幼虫を用いた。一般に鱗翅目昆虫では脂肪体組織は終齢幼虫期に急速に成長し,蛹化前に最大となるので,この時期を用いた。初代培養を始めるためには,まず幼虫を解剖して皮下の筋肉層の内側にある脂肪体組織の塊をできるだけ多く取り出し,生理的塩類溶液(Carlson液)中で付着している余分な組織を取り除き,洗浄後,培地に移して長さ1~2mm程度に切断し,そのまま培養ビンに移した。
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