特集 〈研究室で役に立つ細胞株〉
Ⅲ.間葉系細胞株
肥満細胞
ラット好塩基性白血病細胞:RBL-2H3
木谷 誠一
1
1東京大学医学部物療内科
pp.489
発行日 1992年10月15日
Published Date 1992/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900475
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■樹立の経緯
RBL細胞株は,1973年英国のEcclestonによりwister ratsに,化学物質(β-chlorethylamine)を投与することにより好塩基性白血病として得られたものである。新生児ラットにトランスプラントされても形態変化はなく安定化していることが報告された1)。その後米国国立衛生院(NIH)にて同細胞にIgEレセプターが存在していること,ヒスタミン含有量0.6~0.9μg/106cellsであることが確認されたが,抗原刺激に対して十分なヒスタミン遊離が認められなかったことも,問題点として指摘された2)。これを受けてR. P. Siraganianは,ヒスタミン遊離能を持ったRBL-2H3細胞亜株の分離に成功した3)。1個の細胞につき3×105のIgEレセプターが確認された。以降,同株は高親和性IgEレセプター(以下FcεRI)の同定,機能,細胞内情報伝達系,形態変化の研究のための有用なtoolとして世界各地の多くの分野の研究室で広く使われている。1983年H. Mctzgcrらは,FcεRIの非共有結合による4量体モデルを提唱した。その後各サブユニットの精製,遺伝子のクローニングも同細胞株を使って行われ,ヒトのFcεRIのクローニングの足がかりを提供した。FcεRIはα鎖1個,β鎖1個,ジスルフィド結合した2個のγ鎖から構成され,計7回細胞膜を貫通する。
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